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What do you think about the glasses?

谷尻誠と又吉直樹。SUGATAを考える。 谷尻誠と又吉直樹。SUGATAを考える。

第5弾を数える「JINS Design Project」にて約4年の制作期間を経てリリースされるのは、フランス人兄弟、ロナン&エルワン・ブルレックとのコラボレーションモデルだ。普段、インテリアや都市をデザインする彼らが手がけるメガネは「SUGATA」と名付けられた。その真の魅力を探るべく招集したのは、〈JINS〉の店舗設計も務める建築家・谷尻誠さんと、芸人や作家として活躍する又吉直樹さん。メガネの話題に終始することなく、話は仕事のことやファッションにまで及んでいき…。最終的にたどり着いた、2人が思う「SUGATA」とは。

STAFF CREDIT

Styling_Toshihiro Oku / Photo_Tetsuo Kashiwada / Make-up_Katsuyoshi Kojima / Text_Kodai Murakami / Edit_Keisuke Kimura

社食堂が生んだ2人の接点。

お2人は今回が初対面になりますか?

谷尻:直接は今日が初なんですけど、又吉さんが以前、ぼくらの会社のオフィスでもある「※社食堂」に遊びに来てくださったことがあって。 ※谷尻さんと吉田愛さんが共同主宰する建築設計事務所「サポーズデザインオフィス」の東京事務所に併設された食堂。自分たちで運営しスタッフが使うほか、一般客も利用できる。

又吉:たしかにお邪魔しました。若木信吾さんのつながりで。

谷尻:そうでしたよね。スタッフみんなと写真を撮ってもらったそうで。その節はお世話になりました。

又吉:とんでもないです。ぼく「社食堂」もそうなんですけど、建物がすごく好きなんですよ。

谷尻:そうだったんですか。知らなかった。

又吉:子供の頃に寺社仏閣とかから入ったんですけど、大人になって、ひとが住んでる建物も好きになりまして。すべては存じ上げないんですけど、谷尻さんの「ONOMICHI U2」とかもすごく面白いですよね。

谷尻:ありがとうございます。建築のどこに惹かれます?

又吉:「住んだらどうなるんやろ?」みたいなことを考えるのがワクワクしますね。不動産情報とか、お風呂に入ってるときにずっと見てます(笑)。

谷尻:空き物件を探すのは楽しいですよね。ぼくも移動中とかにずっと見てますよ。

又吉:どうやって施工しようかっていうのも考えることありますか?

谷尻:めちゃくちゃありますね。この立地だったらこういうふうになるなとか、勝手に想像してます。

又吉:ちょっと1回飲みにいって、ぼくのイメージする内装を具現化してもらいたいです(笑)。

谷尻:ぜひぜひ。行きましょうよ。

又吉:なんかこう、自分の頭で考えていたものを設計に落とし込もうとすると、途端につまらなくなるんですよね。もっといいイメージがあったはずなのに、って。

谷尻:それはイメージを図面に書き起こすことに慣れてないだけで。ぼくは逆に文章にすることはできないですもん。

矛盾する言葉と他人への問いが生む新しいアイデア。

頭のなかにあるイメージを具現化するのは2人に共通することだと思いますが、アイデア自体はどこから生まれるんですか?

谷尻:ぼくは言葉から得ることが多いですかね。なかでも矛盾している言葉が好きで。

又吉:たとえばなんですか?

谷尻:「懐かしい未来」とか。この言葉って「懐かしい」と「未来」は聞き慣れてるけど、ひとつの文にするとハッとしません? そうやって言葉で表現したものをデザインや材料に置き換えていくようにしています。

又吉:斬新なだけでもないし、懐かしいだけでもないわけですね。

谷尻:新しすぎるものって、みんな評価できないんですよ。でも、そこになにかしら知っている要素を加えると、途端に定義しやすくなるんです。

又吉:なんとなくわかる気がします。

谷尻:「社食堂」とかは、ぼくらの会社のオフィスでありながら、一般にも解放されている食堂でもあって。いわゆる「現代版民家」なんです。ちゃぶ台を出せばダイニング、布団を敷くと寝室、誰かが死ねば葬儀場になるっていう。そういう昔の民家のような空間の使い方が、実は新しいんじゃないかと思ってつくりました。

又吉:なるほど。そのときどきで空間の使い方を変えられるというコンセプトはすごく好きですね。

谷尻:あと、ぼくは名前がすべてを支配しているんじゃないと考えていて。たまたま地面から70cmくらいの場所に平らな板があって、それに「机」と名付けてしまうと、机としての使い方しかできなくなってしまう、みたいな。

又吉:それでいうと、ぼくはずっと本屋さんがやりたくて。でも、ただの本屋さんにはしたくないんです。

谷尻:どんなことを考えてます?

又吉:まず、通りに面した場所にあって、店内は細長い空間。入口側に本が並べられていて、奥はバーカウンターになっていて。書棚は可動式にして、移動させるとライブスペースにもなるっていう。

谷尻:面白いじゃないですか。

又吉:欲を言えば、キャンピングカーを隣接させて本を詰めて街に発射できようにもしたい。そんなことを誰に頼まれたわけでもないのに、ずっと考えています。

そこまで具体的に考えているということは、実現させたい気持ちも強いですか?

又吉:本屋を営むことは夢ですね。自分が本屋の店員になる設定で、コントとか短編を書くことも多いので、よほどやりたいんやなって思います(笑)。

谷尻:ちょっと見てみたいですけどね。

又吉:実現できたら最高なんですけどね。

話が戻ってしまうんですけど、谷尻さんは先ほど “言葉から考える” とおっしゃっていましたが、それは自分の内側から発されるものですか?

谷尻:建築の場合は依頼主がいるので、まずはインタビューからはじめます。住宅だったら何部屋いるのか、リビングは広い方がいいのか、子ども部屋はどうするのかって。あと、必ずご自宅にもお邪魔させてもらうようにしてます。

又吉:どうしてですか?

谷尻:事務所で打ち合わせをしていても、みなさんカッコつけるんですよ(笑)。

又吉:なんか、わかる気がします(笑)。

谷尻:変なことを言わないようにするわけです。でも、ぼくが知りたいのは、依頼主の価値観。料理が好きなのかとか、音楽が好きなのかとか。そういうパーソナリティが見えると言葉が浮かんでくるんです。

又吉さんのアイデアの出所はどうでしょう?

又吉:ぼくはずっと考えてます。でも、自分で考えられることって、自分の知識の範疇にとどまってしまうので、そこから広げていこうともします。たとえば芸人の先輩と飲んでいるときに「こういうシチュエーションのとき、どうしてます?」って質問したり。そうすると、いろんな角度からの声が聞けるので。

『人間』もそういうふうにして、アイデアを集めてったんですか?

又吉:この小説は『毎日新聞』で9カ月間連載したものをまとめたものなんですけど、17時までに原稿を送らないと余白ができてしまうという、かなり追い込まれた状況で書いていまして。しかも毎日。

谷尻:それは大変でしたね!

又吉:普通、ある程度書き溜めておいたものを順番に入稿していくみたいなんですけど、それをやっちゃうと、途中で辻褄を合わせたくなってしまうと思ったんです。昨日書いた続きを今日書こうとしたときに、この展開は書くのが難しいから、昨日の分に戻って書き直そうとしてしまうような感じで。だから、あえてギリギリの進行で、昨日の自分に責任をもって道をこじあけていくことにしたんです。そしたら、なんだか変なリズムになっていって。

谷尻:1人じゃずセッションみたいですね。

又吉:たしかに、そんな感じでした。単行本にするときに細かいところは修正しましたけど、その変なリズムは極力残すようにしました。ある種、自分の能力だけでは書けなかったことでもあるので。

谷尻:ぼくはそういうのを、ひとの脳を借りるという意味で「借脳」と呼んでいます。

又吉:いいですね、借脳。ぼくも、友だちの相談に乗っているときに、自分で考えてもみないことをしゃべってるときがあって。それで「ありがとう」とか言われたりするんですけど、本当は自分が一番驚いてるっていう(笑)。

谷尻:ありますよね、そういうの。

又吉:でも、それって共同作業なんじゃないかとも思うんです。相手の置かれている状況と、相手の欲しがってる言葉と、自分の脳で考えていることが交って自分の考えを超越できるんじゃないかなと。それは創作も同じことで。そうじゃないと自己模倣を繰り返すことになりますからね。

メガネをかけることで創出される、別のイメージ。

今日はお2人の近著のことも教えていただきたくて。

又吉:谷尻さんの『CHANGE』はどんなことが書かれているんですか?

谷尻:設計事務所って働き方がけっこうクラシックで、「こんな設計料じゃ安くてやっていけない」と不満を持っているひとも多いんです。そういう姿を見ていて、やり方を変えていかないと未来がないなと感じて。しかもいま、働き方について悩んでいるひとが多いじゃないですか。だからなにか、トリガーになるようなものにできないかなと思ったんです。

又吉:働き方についての本ですか。

谷尻:建築家って、ひとりでは仕事ができないんですよ。おもしろいアイデアが湧いても、それを依頼して、つくってもらわなければいけないので。なので働き方もそうなんですが、コミュニケーションに関することも書いてます。

谷尻:「社食堂」も最初はみんなに反対されたんです。「代々木上原駅から離れたところにわざわざ誰が来るの?」とか「ご飯の匂いが事務所に来るのは嫌だ」とか「守秘義務どうするの?」って。でも「これはまだ価値化されていないだけだ」と思って、やってみることにしたんです。いろんな方とコミュニケーションをとりながら。

又吉:それってすごく勇気が必要なことですよね。リスクのあることだから。

谷尻:そうですね。でも、みんなが嫌がることにブルー・オーシャンがあるんじゃないかと思うんですよ。だから、リスクは早く取りにいって、理想とするものをすぐにでも自分たちでつくってしまうのが一番いいと思います。

又吉さんは自身の作品を通して表現したいことはありますか?

又吉:文学が賢いひとのためのものになってることがすごく歯がゆいんです。ファッションや音楽はあんなにも幅広い層に浸透してるじゃないですか。だから、とにかくいろんな層のひとに読んでもらいたいんです。

谷尻:そのほうが広がりも生まれますもんね。

又吉:まさにそうなんですよ。その思いもあって、音楽とかファッションに興味のある登場人物を書いたりしているんですけど、なかなか、そういう方たちに読んでもらえる機会が少ないんです。

『人間』のなかに「仲野太一」という人物がメガネをかけている描写がありますけど、作品のなかにメガネをかけた人物を登場させるとき、どのようなキャラクター設定が多いですか?

又吉:知的な雰囲気を自己演出してるっていう設定が多いかもしれませんね。平凡ですが、こだわりの強いひととか、繊細なひとっていうイメージもそう。仲野太一は「自分はコレ」というものがない人物なんです。だから、周りの影響を強く受けやすい。

谷尻:メガネって現実でも、そういう自己演出の作用はありますよね。

左:『CHANGE-未来を変える、これからの働き方-』¥1,600+TAX、右:『人間』¥1,400+TAX

谷尻さんはメガネをかけて気分が変わることってありますか?

谷尻:やっぱりありますよ。スーツを着ると背筋が伸びるように、メガネをかけると、それと似たような感じになりますね。あとファッションの一部でもあるから、鞄や靴と同じように、スタイリングの決め手にもなりますよね。

又吉:ぼくもメガネありきでコーディネートを決めることがあります。演劇を観に行ったり、美術館へ行ったりするときなんかは、気分の問題なんですけど、フレームがないものを選んだり。それなのにメガネを家に忘れてしまうことが、たまにあるんですよね。それを出先で気づいて、すべてが嫌になって、すぐにでも家に帰りたくなることがあります(笑)。

本当のSUGATAは
ヨロイを脱いで見えてくる。

では、今回のJINS×ロナン&エルワンのメガネはいかがでしょうか?

又吉:形がすごくキレイ。それにめちゃくちゃ軽い。

谷尻:相当軽いですよ、これ。ストレスが本当にない。

デザイン的な特徴を言わせてもらうと、フロントとヒンジ(丁番)をつなぐ「ヨロイ」と呼ばれる部分をなくすアプローチがとられていて、それによってミニマムなフォルムが実現されてるんです。

谷尻:なんか、ロナン&エルワンらしいなと思っちゃいました。

又吉:どの辺がですか?

谷尻:彼らのプロダクトって、どれも「主張がないのに、主張がある」んですよ。そのさじ加減がすごく上手で。

又吉:誰が見てもわかりやすく主張があるものの方が、つくりやすいですもんね。

谷尻:そうなんです。とはいえ、そこはかとなさすぎると、なにもやっていないように見えてしまう。このメガネもですけど、ロナン&エルワンは、いつもそこのバランスが絶妙なんです。

気になるものはありますか?

又吉:形はラウンドかオーバルですかね。あと、どうしても黒とかに目がいっちゃいます。

谷尻:色が淡いものも気になりますけど、やっぱりぼくも黒かなー。

かけ心地はどうですか?

又吉:お世辞とかじゃなく、かけてるのを忘れるくらい軽いです。あと、かけて数分ですけど顔になじんでる感じがありますね。

谷尻:いいものって、すごくこだわってつくられているし、値段も高いじゃないですか。ただ今回のロナン&エルワンのコラボにしてもそうですけど、洗練されたデザインなのにリーズナブルだから、〈JINS〉さんすごいなって、素直に思います。

又吉:これで5000円ですからね。

今回のメガネのコンセプトが“SUGATA”なんですが、「ひとの美しさは仕草や“姿”からもたらされる」「メガネはかけるひとの表情に溶け込み、そのひとの“姿”をつくる」という考えが根底にあります。この見方について、2人の考えをうかがえたらなと。

又吉:言葉にするのがすごく難しいですね…。でも、言うてることはすごくわかります。ファッションで言うなら、ファッション以前の身体にまで意識を向けている感覚なんじゃないですかね。不摂生でだらしない体型になってしまったら、いくらおしゃれをしても元も子もないから。それに近いと思います。

谷尻:だから、ヨロイを取ることで「SUGATA」になるってことですよね。ひとはついヨロイを着がちだけど、それを脱ぐことで本質的なものが見えてくるっていう。

又吉:谷尻さん、もう、めちゃくちゃ綺麗にまとめましたね。ヨロイを脱いだら「SUGATA」になる。…それ、どうにかぼくが言ったことにできません(笑)?

Profile

ダミー名前

Profile

左:谷尻誠

1974年広島県生まれ。2000年に「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を設立。2014年より吉田愛と共同主宰に。住宅、商業空間、ランドスケープ、インスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる。広島・東京の2ヵ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設など国内外合わせ多数のプロジェクトが進行中。

右:又吉直樹

1980(昭和55)年、大阪生れ。吉本興業所属のお笑い芸人。コンビ「ピース」として活動中。2015(平成27)年、「火花」で芥川賞を受賞。他の小説に『劇場』『人間』、エッセイに『第2図書係補佐』『東京百景』などがある。

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